「どうしてそんな言い方をするの?」
つい強い声で言ってしまったあと、
胸の奥がじわっと重くなることはありませんか。
本当は怒りたいわけじゃない。
ただ、心配なだけ。
このまま大きくなったらどうなるんだろう。
友だち関係はうまくいくのかな。
“あの子、きついよね”なんて思われていないだろうか。
私の育て方がどこか間違っているのだろうか――。
乱暴な言葉や口喧嘩が続くと、
保護者の心は静かにすり減っていきます。
園や学校から
「お友だちとのトラブルがありまして…」
と聞かされた日は、
帰宅してからも頭の中でその場面が何度も再生される。
そして、よく耳にする言葉があります。
「この年齢ならよくあることですよ。」
「成長の過程です。」
確かに、それは事実です。
発達の視点から見れば、
3〜10歳は感情が急激に広がる一方で、
それを整理して言葉にする力はまだ発展途中の時期です。
感情のエネルギーは大きくなる。
でも、感情を扱う技術は追いついていない。
そのアンバランスさが、
強い言葉として表に出ることは珍しくありません。
けれど――
本当にそれだけでしょうか。
乱暴な言葉は、
単なる「通過点」なのでしょうか。
それとも、
子どもなりの必死なメッセージなのでしょうか。
現場で多くの子どもたちと関わっていると、
一つの共通点に気づきます。
乱暴な言葉の奥には、必ず“何か”がある。
悔しさ。
分かってほしさ。
守りたい気持ち。
あるいは、余裕のなさ。
この記事では、
「成長だから仕方ない」とひとまとめにせず、
乱暴な言葉の奥にあるものを、
年齢ごとの違いも踏まえながら丁寧にひもといていきます。
叱るか、許すか、の二択ではなく、
子どもの言葉をどう“見立てるか”。
その視点が少し変わるだけで、
親の心の重さは、きっと変わります。
目次
3〜5歳の乱暴な言『 感情が爆発するのは、心が育っている証拠 』
3〜5歳の子どもを見ていると、
ある特徴があります。
感情の振れ幅が、とても大きい。
さっきまで笑っていたのに、
次の瞬間には怒っている。
ほんの些細なことで、
世界が終わったかのように泣く。
これは「気分屋」だからではありません。
この時期は、
感情を感じる力が急速に育つ一方で、
感情をコントロールする脳の働きは、まだ未成熟です。
つまり、
・気持ちは強い
・でも扱い方が分からない
というアンバランスな状態なのです。
なぜ言葉が荒れやすいのか
3〜5歳の子どもは、語彙が一気に増える時期でもあります。
- 言葉を覚える。
- 使ってみる。
- 反応を見る。
まさに“言葉の実験期”。
その中で、強い言葉ほど「反応が大きい」ことに気づきます。
- 「イヤ!」
- 「ダメ!」
- 「きらい!」
こうした言葉は、
一瞬で相手の動きを止めます。
つまり子どもにとっては、即効性がある道具なのです。
悪気はありません。
計算もありません。
ただ、
“効果があった”経験が、
その言葉を繰り返させます。
この年齢で多いパターン
3〜5歳の乱暴な言葉には、いくつか典型的な背景があります。
① 思い通りにならないとき
順番が来ない。
おもちゃを取られた。
ルールを変えられた。
「納得できない」が
そのまま言葉になります。
② 疲れているとき
夕方。
空腹。
眠気。
この時間帯は、
感情のブレーキが弱くなります。
③ 甘えたいとき
実は、
一番言葉が荒れやすいのは“安心している相手”に対してです。
保護者にだけ強くなる子は、
「この人は離れない」と分かっている証拠でもあります。
ここでやりがちな対応
この時期に多いのが、
- 「そんな言い方ダメ!」
- 「きらいなんて言わない!」
と、言葉そのものを止めようとする対応。
もちろん、放置する必要はありません。
ただ、順番が大事です。
いきなり言葉を正すと、子どもはこう感じます。
“気持ちは分かってもらえなかった”
すると感情は収まらず、さらに強い言葉になります。
3〜5歳に必要なのは「翻訳」
この年齢の子どもに必要なのは、叱責よりも翻訳です。
「イヤ!」の裏には、
・取られて悔しい
・まだ使いたかった
・自分の番だと思っていた
が隠れています。
だから、
「まだ使いたかったんだね」
「取られて悔しかったね」
と、まず気持ちを言語化してあげる。
すると子どもは、“分かってもらえた”と感じ、
感情の波が少し下がります。
そのあとで、
「イヤ、じゃなくて“まだ使いたい”って言えるといいね」
と“別の表現”を渡す。
この順番が、
言葉の質を育てます。
実はここが土台になる
3〜5歳の時期は、言葉の“マナー”を教える時期ではありません。
感情と安心を結びつける時期です。
ここで
・気持ちは受け止めてもらえた
・間違えてもやり直せた
という経験を積むと、
小学生以降の
自己コントロールの力につながります。
逆に、
・気持ちは否定される
・言葉だけを強く止められる
経験が続くと、感情を押し込めるか、さらに強く出すか、どちらかに傾きやすくなります。
3〜5歳の乱暴な言葉は「未熟」ではない
よくある誤解があります。
「うちの子、まだ幼いのかな」
「性格がきついのかも」
違います。
3〜5歳の乱暴な言葉は、
感情のエネルギーが強い証拠です。
そして、
そのエネルギーは
将来の主体性や自己主張の土台になります。
今はまだ荒削りなだけ。
削るのではなく、
整えていく。
それがこの時期の関わりです。
6〜10歳の乱暴な言『感情ではなく「立場」と「自尊心」が動く時期 』
6歳を過ぎると、子どもは一気に“社会の中の自分”を意識し始めます。
- 誰が上か下か
- 自分はどう見られているか
- 負けたらどう思われるか
- 正しいのはどっちか
世界が「自分中心」から「集団の中の自分」へ広がります。
この変化が、言葉に影響します。
なぜ6〜10歳は言葉が鋭くなるのか
この時期の子どもは、
・語彙が増え
・論理的に話せるようになり
・相手の弱点も見えるようになります
つまり、
言葉の精度が上がるのです。
すると何が起きるか。
言葉は「感情の爆発」ではなく、
“自分を守る道具”になります。
たとえば、
・「うるさい」
・「お前が悪い」
・「だから嫌われるんだよ」
こうした言葉の裏には、
・負けたくない
・バカにされたくない
・弱く見られたくない
という強い防御本能があります。
攻撃に見えて、実は防御。
ここを見誤ると、「性格がきつい」「意地悪」とラベルを貼ってしまいます。
6〜10歳で起きやすい背景
この年齢の言葉の荒れは、
いくつかの背景が重なっていることが多いです。
① 競争の世界に入る
小学校に入ると、
・テスト
・順位
・足の速さ
・友達の多さ
など、“見える評価”が増えます。
比べられる環境の中で、子どもは無意識に緊張しています。
その緊張が抜ける場所で、言葉が荒れることがあります。
② 正しさへのこだわり
6〜8歳頃は特に、
「それはルール違反!」
「今のずるい!」
と、正しさに敏感になります。
これは道徳心が育っている証拠ですが、
同時に、
“自分が正しい”という立場を守ろうとする力”
でもあります。
その結果、言い方が強くなります。
③ 思春期の入口(9〜10歳)
9〜10歳頃になると、心の中に微妙な変化が起き始めます。
・親の言葉が素直に入らない
・プライドが芽生える
・からかわれることに敏感になる
この時期は、
心が少し不安定になります。
その不安を隠すために、
言葉が強くなることがあります。
ここで親が間違えやすいこと
6〜10歳になると、
「分かって言ってるでしょ?」
「考えれば分かるよね?」
と言いたくなります。
確かに、理解力は上がっています。
でも、
感情のコントロールはまだ未完成です。
頭では分かっている。
でも、心が追いつかない。
このギャップが、トゲのある言葉になります。
6〜10歳に必要なのは「尊重」
この年齢で一番大切なのは、
“子ども扱いしすぎないこと”
です。
強い言葉の裏にあるのは、
・自分を認めてほしい
・一人の人間として扱ってほしい
という思い。
だから、
「そんな言い方やめなさい」
で終わらせるよりも、
「そう言いたくなった理由は何?」
と聞く方が、心に届きます。
言葉を整えるための関わり方
6〜10歳では、
- 気持ちを認める
- 伝え方を一緒に考える
- 修正する力を育てる
この3ステップが効果的です。
たとえば、
「それはムカつくよね。でも“うるさい”じゃなくて“今は静かにしてほしい”って言えるともっと伝わるよ。」
この関わりは、
・感情はOK
・表現は整える
というメッセージになります。
6〜10歳の乱暴な言葉は「自尊心の揺れ」
この時期の子どもは、
強そうに見えて、
実はとても繊細です。
・からかわれる。
・負ける。
・注意される。
その一つひとつが、自尊心を揺らします。
言葉が荒れるのは、
その揺れを守ろうとしている証拠。
ここで大人が力で押さえつけると、さらに強くなります。
でも、
「守りたかったんだね」
と見立てられると、子どもは少し安心します。
3〜5歳と6〜10歳の決定的な違い
・3〜5歳は感情があふれている。
・6〜10歳は立場と自尊心が揺れている。
同じ“乱暴な言葉”でも、
中身はまったく違います。
だからこそ、
ひとまとめにしてはいけないのです。
親の言葉づかいと家庭の環境は、想像以上に影響しています
子どもが乱暴な言葉を使うと、
「どこでそんな言葉を覚えたの?」
と驚くことがあります。
でも子どもは、特別な場所で覚えるわけではありません。
毎日の生活の中で、
自然に、静かに、吸収しています。
朝のあわただしい時間。
「早くして!」
「何回言えばわかるの?」
疲れて余裕がない夜。
ため息まじりの返事。
少し強くなってしまう口調。
兄弟げんかの言い合い。
テレビや動画の中のセリフ。
子どもはそれを「良い・悪い」と判断する前に、まず“そのまま覚えます”。
そして体験します。
・強く言うと相手が止まる。
・きつく言うと負けないで済む。
そうやって、言葉の使い方を少しずつ学んでいきます。
これは、誰かを責める話ではありません。
ただ、
子どもにとって家庭は、
一番長くいる場所であり、
一番安心している場所です。
だからこそ、
そこで交わされる言葉や空気は、
そのまま「土台」になります。
言葉以上に伝わっているのは「やり直し方」
ここで大切なのは、
完璧な言葉づかいをすることではありません。
忙しい日もあります。
余裕のない日もあります。
つい強く言ってしまう日だってあります。
でも、そのあとです。
「さっきは言いすぎたね。」
「言い方きつかったね、ごめんね。」
この一言を伝える姿は、
子どもにとって、とても大きな学びになります。
家庭の言葉づかいは、
子どもの未来の話し方の土台になります。
でもそれは、
完璧な言葉を並べることではありません。
強く言ってしまったあとに、
やり直す姿を見せること。
子どもは、
親の失敗で傷つくのではなく、
親のやり直しを見て、
「人は整え直せる」と学んでいきます。
環境は「責めるもの」ではなく「整えられるもの」
もしこの記事を読んで、
「やっぱり私のせいかもしれない」
と感じた方がいたら、
それは違います。
親も人間です。
完璧な家庭なんてありません。
大切なのは、
気づいたあと、少し整えること。
・強く言ってしまったら、あとで言い直す
・イライラしているときは「今ちょっと余裕ない」と言葉にする
・子どもの強い言葉の奥にある本音を言い換えてあげる
大きなことを変えなくてもいい。
ほんの少し、
家庭の空気をやわらかくする意識だけで、
子どもの言葉は少しずつ変わっていきます。
子どもは、思っている以上に、親の言葉よりも“姿勢”を見ています。
そしてその姿勢が、やがてその子の言葉になります。
もしかしてSOSかも?
少し立ち止まって見てみるチェックリスト
乱暴な言葉は、成長の途中でよく見られる姿でもあります。
でも、ときには「心の余裕が減っているよ」というサインの場合もあります。
不安になるためではなく、
少し立ち止まるためのヒントとして、見てみてください。
もしかしてSOS?チェックリスト
当てはまる項目にチェックを入れてみましょう。
今までと明らかに違う変化がある場合は、心の負担が影響していることがあります。
以前より怒りやすいと感じるときは、気持ちの余裕が減っている可能性があります。
外で頑張りすぎて、安心できる家で一気に緩んでいることもあります。
心の負担は、体のリズムに出やすいものです。
あきらめの言葉は、自信が揺れているサインかもしれません。
元気に見えても、心の中で頑張りすぎていることがあります。
✔ チェックの目安
0個
成長過程の可能性が高いでしょう。大きな心配はなさそうです。
1〜2個
少し疲れが出ているかもしれません。安心できる時間を少し増やしてみましょう。
3〜4個
心の余裕が減っているサインかもしれません。丁寧に話を聴く時間を作ってみましょう。
5個以上
強いSOSの可能性があります。生活リズムを見直し、必要であれば学校や専門家への相談も視野に入れてみてください。
るう先生より
22年間、たくさんの子どもたちと向き合ってきましたが、
言葉が強い子ほど、その奥に「分かってほしい」がありました。
整える前に、まず聴くこと。
それだけで、子どもの言葉はゆっくり変わっていきます。
いくつ当てはまったら心配?
ここで一番お伝えしたいことがあります。
1つ当てはまったからといって、
すぐに「大きな問題」と決めつける必要はありません。
大切なのは、
・急な変化かどうか
・それが続いているかどうか
・生活に影響が出ているかどうか
です。
もし気になるときはすぐに厳しく直そうとしなくて大丈夫です。
まずは、
・少しだけ会話の時間を増やす
・スキンシップを増やす
・「最近どう?」と軽く聞いてみる
それだけでも、子どもは安心します。
それが、遠回りに見えて一番の近道だと感じています。
よくある質問コーナー
まず大切なのは順番です。
いきなり「ダメ」と止めると、
子どもは「気持ちは分かってもらえなかった」と感じやすくなります。
先に、
「悔しかったんだね」
「イヤだったんだね」
と受け止める。
そのあとで、
「でも、その言い方だと相手は傷つくよ」
と整える。
叱ることが悪いのではありません。
受け止めてから整えることが大切です。
それは「甘えている証拠」であることが多いです。
外で頑張っている分、
安心できる場所で感情が出ます。
むしろ、
どこでも爆発しているより、
家で出せているほうが健全なこともあります。
ただし、
急に強さが増えた場合は、
ストレスが溜まっていないか注意して見てあげてください。
大丈夫です。
完璧な親はいません。
大切なのは、
「言ってしまったあと、どうするか」
です。
「さっきは言いすぎたね」
とやり直す姿は、
子どもにとって大きな学びになります。
年齢だけでは判断できません。
3〜5歳は感情のコントロールが未熟。
6〜10歳は自尊心が揺れやすい時期。
それぞれ理由が違います。
ただ、
感情を言葉で整える経験を重ねた子は、
少しずつ落ち着いていきます。
焦らなくて大丈夫です。
ひとつの目安は「変化」です。
・急に強くなった
・睡眠や食欲が変わった
・元気がなくなった
こうした変化がある場合は、
心の余裕が減っている可能性があります。
一時的なものであれば成長過程のことも多いですが、
続く場合は丁寧に見てあげましょう。
まとめ
乱暴な言葉や口喧嘩が続くと、どうしても「直さなきゃ」と焦ってしまいます。
でも、ここまでお伝えしてきたように、その言葉は“原因”ではなく“結果”です。
3〜5歳なら、感情があふれているサイン。
6〜10歳なら、自尊心や立場を守ろうとしているサイン。
そしてどの年齢でも、家庭や周りの言葉、空気、やり取りの積み重ねが、少しずつ子どもの話し方に影響しています。
けれどそれは、「親のせい」という意味ではありません。
子どもは、完璧な言葉づかいを求めているのではなく、整え直す姿を見ています。
強く言ってしまう日があってもいい。
余裕がない日があってもいい。
そのあとに、
「さっきは言いすぎたね」
とやり直すこと。
子どもの強い言葉の奥にある本音を、そっと通訳してあげること。
その小さな積み重ねが、やがて子どもの言葉の土台になります。
乱暴な言葉が出るのは、その子がちゃんと感じている証拠です。
感じる力があるからこそ、
今は少し荒削りなだけ。
・焦らなくていい。
:比べなくていい。
子どもは、分かってもらえた経験を重ねながら、
少しずつ、自分の言葉を育てていきます。
そして親もまた、一緒に育ち直していけます。
言葉は、叱って変えるものではなく、安心の中で育つものです。
今日の一言が、未来のその子の話し方をつくります。

